今回はよく出てくる糖について紹介していこうと思います。よく出てくる糖については構造も併せて覚えていると便利です。余裕のある方は覚えてみてください。
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最も重要な糖、グルコース。そしてよくある糖はグルコースと似ている
まず、基本は D-グルコース (D-glucose) です。なんといっても D-グルコースの構造を覚えてください。実は、D-グルコースはこの世で最も豊富に存在する糖です(例えばデンプンの構成糖、セルロースの構成糖などといえばピンとくるのではないでしょうか)。これは立体構造上、最も安定しているからです。そして、D-グルコースと構造が似ているということは比較的安定であるということなので、よくある糖というのはD-グルコースに構造が似てきます。なのでD-グルコースを基準にどこがD-グルコースと違うかに注目すると覚えやすいのではないかと思います。
D-マンノース (D-mannose) は2番目の炭素の水酸基と水素がひっくり返っています。D-フルクトース (D-fructose) はアルデヒド基がCH2OHになって2番目の炭素がケト基になっています。D-ガラクトース (D-galactose) は4番目の炭素の水酸基と水素がひっくり返っています。D-リボース (D-ribose) はD-グルコースの3番目の炭素が丸々なくなっています。これらの単糖はよく見られる単糖です。どうでしょうか?グルコースの一部が変わっているだけというものが多くないでしょうか?
そのほかの特徴的な単糖
DとかLとか書いていますが、今は立体構造を表す言葉なんだなくらいで理解しておいてください。今後、別記事で紹介しようと思います(詳しくは単糖と立体異性体についてを参照してください)。実は天然ではD体をとる単糖が多いのですが、アラビノース (arabinose) は珍しくL体をとります。
グリセルアルデヒド (glyceraldehyde) は炭素3つのアルドースです。最も単純なアルドースでもあります。グリセリンの末端がアルデヒド基に置換していることからグリセリン (glycerol)+アルデヒド (aldehyde) =グリセルアルデヒドと見ると名前が覚えやすいと思います。
ジヒドロキシアセトン (dihydroxyacetone) は炭素3つのケトースで、最も単純なケトースです。アセトンの末端にヒドロキシル基(水酸基)が二つ付いているのでジ(di: 二つの)ヒドロキシ(hydroxy: 水酸基がついた)アセトン (acetone) と見るとわかりやすいと思います。
グリセルアルデヒドやジヒドロキシアセトンは最も重要な代謝経路である解糖系でもそのリン酸化物が出てくる重要な化合物です。ですので、ぜひ構造と合わせて覚えておいてください。
炭素の番号の付け方
番外編的になりますが、位置番号の付け方について書きたいと思います。有機化学の分野にはなりますが、今後もよく使うので覚えてくださいね。
置換基の位置を説明するのに、”ケト基から一つ隣の~” みたいな説明ではイマイチよくわかりませんよね。ですので位置番号というものが考案されています。単糖に特化して位置番号の付け方を説明します。
位置番号は上から順番に
鎖状構造を描く場合、必ずアルデヒド基又はケト基が上に来るように記載してください。そして、上の炭素から順番に番号を振っていきます。すると図のように番号が割り振れます。有機化学を履修した人はわかると思いますが、アルデヒド基やケト基は優先順位が高いのでこのような付け方になります。今後はこの番号を使って位置を指定します。例えば、グルコースの上から4番目の炭素なら “4 位の炭素”、フルクトースの6番目の炭素なら “6 位の炭素” といった具合です。
今回はここまでです。次回はヘミアセタールとへミケタールについて説明します。ちょっと難しい内容になりますが、できるだけわかりやすくまとめますので、また読んでください。お疲れさまでした。
参考文献
- 島原健三 (1991). 概説 生物化学. 三共出版. pp. 5-34
- 2.Jeremy M. Berg, John L. Tymoczko, Gregory J. Gatto Jr., Lubert Stryer著、入村達郎、岡山博人、清水孝雄、中野徹訳 (2018). ストライヤー生化学 第8版. 東京化学同人. pp. 290-313
- John McMurry著、伊東椒、児玉三明訳 (2000). マクマリー有機化学 第4版. 東京化学同人. pp. 439-470
- K. P. C. Vollhardt, N. E. Schore著、古賀憲司、野依良治、村橋俊一、大嶌幸一郎、小田嶋和徳、小松満男、戸部義人訳 (2020). ボルハルト・ショアー現代有機化学 第8版. 化学同人. pp. 1425-1486
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