私たちの体をつくるたんぱく質は、20種類の主なαアミノ酸から成り立っています。これらのアミノ酸は、それぞれ個別にではなく、いくつかの共通した経路を通じて合成されます。共通点に注目することで、アミノ酸の生合成はぐっと理解しやすくなります。今回はその大まかな流れを概説し、生合成の全体像をつかんでいきましょう。
Contents
アミノ酸の生合成の概要
アミノ酸の生合成は主にアミノ基の供給と炭素骨格の供給に分けて考えると理解しやすいと思います。さらに、炭素骨格の供給源は以下に示す 6 種類です。
- アミノ基の供給
- アミノ基転位反応によってグルタミン酸から供給される
- 炭素骨格の供給
- 主に6種類の炭素骨格の供給源がある
- オキサロ酢酸
- ピルビン酸
- 2-オキソグルタル酸
- ホスホエノールピルビン酸+エリトロース-4-リン酸
- リボース-5-リン酸
- 3-ホスホグリセリン酸
- 主に6種類の炭素骨格の供給源がある
アミノ基の供給
2-オキソグルタル酸がアンモニアを受け取ることでグルタミン酸に変換されます。この反応は窒素をアミノ基として取り込む役割を担っています。グルタミン酸は様々なアミノ酸へアミノ基を供給する供給源となります。この反応は α-オキソ酸のようなカルボニル化合物とアミノ基供与体(多くの場合はグルタミン酸)が反応してシッフ塩基を形成することで始まります。シッフ塩基とはイミノ基(NH2=C)を含む化合物で、容易に還元されて水素化される性質を持っています。図1は 2-オキソグルタル酸にアンモニアが付加してグルタミン酸を生成する反応を示しています。この反応は 2-オキソグルタル酸のカルボニル基(C=O)にアンモニアの窒素が攻撃することで反応が始まります。その結果、イミノ基(NH2=C)を持つシッフ塩基が生成されます。このシッフ塩基の生成はアミノ基転位のカギとなります。シッフ塩基は容易に還元され、水素を受け取って(水素化されて)、イミンがアミノ基へ変換されます。このようにしてグルタミン酸が生成されます。

炭素鎖の供給
炭素鎖の供給源となる分子はTCA 回路、解糖系、ペントースリン酸経路の中間体に由来するものです。以下にまとめます。
- 解糖系の中間体
- ピルビン酸
- ホスホエノールピルビン酸
- 3-ホスホグリセリン酸
- TCA 回路の中間体
- オキサロ酢酸
- 2-オキソグルタル酸
- ペントースリン酸経路の中間体
- エリトロース-4-リン酸
- リボース-5-リン酸
オキサロ酢酸から生成されるアミノ酸
オキサロ酢酸は炭素数が 4 つの 2-オキソ酸であり、アミノ基転位によりアミノ基を受け取ると、アスパラギン酸に変換されます。さらに、アスパラギン酸がさらにアミノ基を受け取るとアスパラギンに転換されます。また、アスパラギン酸はリン酸化を経てトレオニンを生成します。これらのアミノ酸は炭素数が四つのアミノ酸です。一方で、メチオニンは硫黄を持っていますが、この硫黄はシステインに由来しています。リシンやイソロイシンは炭素数が 6 つですが、足りない炭素はピルビン酸から供給されます。
このように、オキサロ酢酸からは以下のアミノ酸が生成されます。
- オキサロ酢酸から生成されるアミノ酸:
- アスパラギン酸
- アスパラギン
- メチオニン
- トレオニン
- イソロイシン
- リシン

■ は必須アミノ酸を表す
ピルビン酸から生成されるアミノ酸
ピルビン酸は炭素数 3 の 2-オキソ酸であり、アミノ基転位を受けて種々のアミノ酸が生成されます。もっとも単純なものはアラニンです。アラニンは炭素数 3 のアミノ酸ですね。一方で、バリンやロイシンはそれぞれ炭素数が5と6のアミノ酸ですが、これらのアミノ酸は二分子のピルビン酸から炭素骨格が合成され、アミノ基転位を受けて生成されます。
ピルビン酸から生成されるアミノ酸を以下に示します。
- ピルビン酸から生成されるアミノ酸:
- アラニン
- バリン
- ロイシン

■ は必須アミノ酸を表す
ホスホエノールピルビン酸とエリトロース-4-リン酸から生成されるアミノ酸
ホスホエノールピルビン酸とエリトロース-4-リン酸からは主に芳香族アミノ酸が生成されます。ホスホエノールピルビン酸とエリトロース-4-リン酸が会合して閉環するとコリスミ酸が生成されます。コリスミ酸は多くの芳香族アミノ酸の前駆体で、コリスミ酸からはチロシン、フェニルアラニン、トリプトファンが生成されます。なお、トリプトファンはコリスミ酸と5-ホスホリボシル-1-二リン酸が会合して生成されます。
以上の内容を以下にまとめます。
- ホスホエノールピルビン酸とエリトロース-4-リン酸から生成されるアミノ酸:
- フェニルアラニン
- チロシン
- トリプトファン

■ は必須アミノ酸を表す
2-オキソグルタル酸から生成されるアミノ酸
2-オキソグルタル酸は炭素数が5の 2-オキソ酸です。2-オキソグルタル酸がアミノ基転位を受けると、グルタミン酸となります。グルタミン酸がさらにアミノ酸転位を受け取るとグルタミンに変換されます。一方で、グルタミン酸が環状構造をとるとプロリンが生成されます。これらのアミノ酸は炭素数が5のアミノ酸ですね。一方で、グルタミン酸からオルニチンを経て尿素回路を経由するとアルギニンが生成されます。アルギニンの炭素一つは炭酸から、窒素はアスパラギン酸から供給されます。
このように、2-オキソグルタル酸からは以下のアミノ酸が生成されます。
- 2-オキソグルタル酸から生成あれるアミノ酸:
- グルタミン酸
- グルタミン
- プロリン
- アルギニン

リボース-5-リン酸から生成されるアミノ酸
リボース-5-リン酸からは5-ホスホリボシル-1-二リン酸(PRPP)の前駆体となりますが、PRPP はさらに、ヒスチジンを生成する前駆体となります。
- リボース-5-リン酸から生成されるアミノ酸:
- ヒスチジン

3-ホスホグリセリン酸から生成されるアミノ酸
3-ホスホグリセリン酸は酸化されると2位の炭素がカルボニル基(C=O)に変換され、アミノ基転位を受けます。このようにしてセリンが生成されます。セリンはメチオニンから硫黄を受け取ることでシステインを生成します。一方でセリンからメチレン基をテトラヒドロ葉酸に渡すとグリシンが生成されます。さらに、テトラヒドロ葉酸のメチレン基と炭酸、アンモニアがNADH を消費して、会合するとグリシンがもう一分子生成されます。
以下にまとめます。
- 3-ホスホグリセリン酸から生成されるアミノ酸:
- セリン
- システイン
- グリシン

今回は、アミノ酸生合成の全体像をつかんでいただくために、その概要を解説しました。次回からは、アミノ基の転移反応や、各炭素骨格からどのようにアミノ酸が合成されるのかといった、より具体的で興味深いテーマに踏み込んでいきます。各論は少し複雑に感じるかもしれませんが、今回の概要をしっかりと理解しておくことで、よりスムーズに理解できるはずです。気になる点があれば、ぜひこの記事を振り返ってみてください。知識がつながっていく感覚を楽しみながら、学びを深めていきましょう!
参考文献
- 島原健三 (1991). 概説 生物化学. 三共出版. pp. 208-223
- Jeremy M. Berg, John L. Tymoczko, Gregory J. Gatto Jr., Lubert Stryer著、入村達郎、岡山博人、清水孝雄、中野徹訳 (2018). ストライヤー生化学 第8版. 東京化学同人. pp.665-693
- D. Voet, J. G. Voet, C. W. Pratt 著、田宮信雄、八木達彦、遠藤斗志也、吉久徹訳 (2017) ボート 基礎生化学 第5版. 東京化学同人. pp.496-503
- KEGG PATHWAY DATABASE. 2025-03-03. https://www.genome.jp/kegg/pathway.html