私が学生の頃には糖質というとエネルギー源になるくらいのイメージしか持っていませんでした。正直、なめてましたし、糖の何が面白いのかよくわかりませんでした。ところが、最近では糖鎖研究が進み、様々な機能がわかってきていたり、ある種の疾病と糖鎖の関係が明らかになってきている、ある種の病原菌のワクチンに利用されるなど、研究や応用の範囲が広がっている分野の一つで今後の展開が期待されています。これから何回かにわたって糖鎖について少し勉強をしていこう思います。基本的なことをまとめていこうと思いますので、学習に役立てていただけたら嬉しいです。そして、もし糖質に興味のわいた人はぜひもっと詳しく勉強をしてみてくださいね。
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単糖、オリゴ糖、多糖 ~糖質の大分類~
単糖は基本単位となります。オリゴ糖と多糖は単糖が脱水縮合して鎖状につながったものです。長さによってオリゴ糖・多糖の呼び方が変わります。ざっくりとまとめてみました。
単糖:
定義:アルデヒド基 (-CHO基) 又は、ケト基 (C=O基) を持つ多価アルコール (いくつも水酸基を持つ)。
上の定義について説明します。
図1を見てください。左側にアルデヒド基を持つ単糖(D-グルコース)の構造を示しています。このような単糖のことをアルドース(アルデヒド+オース、英語表記:aldose; aldehyde + –ose)といいます。緑で囲った部位がアルデヒド基です。
一方で右側にはケト基を持つ単糖(D-フルクトース)を示しています。このような単糖はケトース(ケト+オース、英語表記:ketose; keto + –ose)といいます。緑で囲った部分がケト基です。
どちらについても赤字で描いた水酸基が多数ついていることがわかるかと思います。これが”多価アルコール”ということです。蛇足かもしれませんが、アルドースやケトースのように語尾が “オース” とすることで糖を表すことが多いので覚えておくと便利です。例えば、グルコース、フルクトース、ラクトースなどです。
オリゴ糖 (oligosaccharide):
数分子~十数分子くらいの単糖が脱水縮合してできている分子。
単純な鎖状の構造をとる場合が多い。
多糖 (polysaccharide):
多数の単糖が脱水縮合してできている分子。
枝分かれなど複雑な構造をとる場合が多い。
オリゴ糖は構造が単純で多糖は複雑な構造をとる
オリゴ糖と多糖のイメージを図2に示しています。オリゴ糖は左側のように比較的簡単な構造をとる場合が多く、多糖では右側のように枝分かれがあるなど複雑な構造をとる場合が多いです。
今回は大雑把に糖質についてみてきました。次回からは単糖の詳細について見ていきたいと思います。お疲れ様でした。
参考文献
- 島原健三 (1991). 概説 生物化学. 三共出版. pp. 5-34
- 2.Jeremy M. Berg, John L. Tymoczko, Gregory J. Gatto Jr., Lubert Stryer著、入村達郎、岡山博人、清水孝雄、中野徹訳 (2018). ストライヤー生化学 第8版. 東京化学同人. pp. 290-313
- John McMurry著、伊東椒、児玉三明訳 (2000). マクマリー有機化学 第4版. 東京化学同人. pp. 439-470
- K. P. C. Vollhardt, N. E. Schore著、古賀憲司、野依良治、村橋俊一、大嶌幸一郎、小田嶋和徳、小松満男、戸部義人訳 (2020). ボルハルト・ショアー現代有機化学 第8版. 化学同人. pp. 1425-1486
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